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野藤 弘幸 准教授(保健医療学部 作業療法学科)


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作業療法で生活の満足感を保障する
作業とは、ひとが日々行う楽しいこと(趣味など)、生活のこと(買い物や着替えなど)、そして生産的なこと(仕事、ボランティアなど)を言います。これらが障害によりできないままだと、不満足な生活を過ごすことになります。そこで、クライアント(後で述べますが、作業療法では患者と言いません)の能力を改善して、毎日の生活に気持ち良く参加できるようにする、もしくは環境を調整(家屋の改造や福祉用具の使用など)してクライアントの能力を助ける、これが作業療法です。いわば、生活を練習するリハビリテーション、です。私は作業療法の評価法(クライアントの生活能力を見立てる検査法)の開発に取り組んでいます。(図)

主観を客観的に証明するために
医療の世界では、主観を極力排除した客観的なエビデンスのみが求められてきました。しかし、作業療法士はクライアントの主観に寄り添って働き掛けていく仕事です。クライアントとは、自分の人生の主人公としての権利を持ち、自分の生活に参加するために作業療法を求めてくるひと、という意味です。作業療法の大原則は「クライアント中心」ですから、介入の効果を証明するには、対象者の主観(個人の意志に基づいた行動で示されるもの)を客観(統計学的に妥当で信頼できるもの)に置き換えるためのものさしが必要になります。これが作業療法の評価法です。

「人間作業モデル」の効果
私が研究を行う上で基づいている作業療法の理論は「人間作業モデル(A Model of Human Occupation)」です。作業療法の理論で介入効果のエビデンスが国際的に多く報告されているのは唯一、この人間作業モデルだけです。この理論では、意志・習慣化・遂行能力・環境の4つの要素が相互に影響を及ぼし合うことで、ひとが自分の生活へ参加する、と考えます。例えば、下肢に障害を持ち、車椅子生活となったクライアントが「料理ができるようになりたい」(意志)と言った時に、私たちはキッチンに立たなくても、車椅子のままテーブル調理器(環境)で一緒に料理を練習します(遂行)。これを繰り返して、毎日の生活の日課とする(習慣化)と、次はもっと複雑な料理に挑戦したい(意志)と、生活への参加が変化します。この変化を、評価法で判定し、統計的に検討することで介入の効果を証明することができます。

[ 野藤准教授の臨床 ]
Kielhofner, G: Conceptual Foundations of Occupational
Therapy Practice, F.A. Davis, 2009に紹介されている。

作業療法=ダイバーシティ(多様性)
作業療法の世界はそのものがダイバーシティであると言えます。例えば、利き手が動かなくなった方は多く作業療法を受けに来られますが、練習したいことはさまざまです。以前に担当をさせていただいた女性の方は、「いくら入院だからといって、化粧もせずに院内を移動できない」と、利き手ではない方で化粧を練習されました。この方にとっては、お箸を持つ、文字を書くよりも、化粧をすることが価値のある作業であったのです。クライアント個人の生き方や価値観を受け入れて、そのひとらしい人生を支援する、「クライアント中心」はまさにダイバーシティです。


学部生との実習活動 ]
感覚−運動統合に働き掛ける知的好奇心を促す
遊びの提供(地域貢献活動の一環)

思いやりと生きる力を持った作業療法士に
多様な価値観を持っているひとは、相手の立場に立って共感することができます。常葉大学ではボランテイアや地域貢献活動が盛んですが、こういった活動にも対象となる方への共感と、多様性の受容が欠かせません。ですから、すべての学生が多様性について学び、考える機会をもっと増やしていく必要があります。作業療法士を志すならばなおさらです。多様性ときちんと向き合い、思いやりを持って生きる力を伝えることができる作業療法士になってほしいと思っています。

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