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ダンス教育がもたらすもの


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体育科教育学、中でもダンス教育を専門にしています。ダンス教育を研究するきっかけは、私が小学校教諭としてダンスの研究授業を行った時、助言者であった大学教授(後に筆者の大学院指導教官)の「柳瀬先生のクラスの児童は踊っていません」という一言でした。「児童が踊っていない?!」「踊るとは何か?」という疑問が湧き、その強烈な一言が私をダンス教育の研究へと誘うことになりました。

当時の私は、ダイナミックに動く等見栄えを重視した技能指導を行っていました。しかし、ダンスとは、「他者に働きかけられたり(受動)、自分なりの表現で働きかけたり(能動)」する、他者との「応答関係」に中で生起する現象であるということが分かってきました。ダンスとは、他者をベースとしながら、そこに自分なりの表現を加えてアレンジしていくところに運動の文化的な価値があるのです。

21世紀型の学びとして、佐藤学(2011)は想像力に基づく創造性の教育として「アートの学び(Arts in Education)」を挙げています。これは、体育・図工・音楽等の教科としての芸術(Art Education)ではなく、教育全体を貫く原理です。身体をベースに、自分の感覚の違和に基づきながら既存の知覚や行動の型を変換して、他者の感覚ともすり合わせながら、今までとはちょっと違った自分たちなりの見方や行動を創造していく行為です。ダンス教育は、まさに自分の身体を介して他者とかかわり、そこで自分たちの表現を探求していく「アートの学び」の場であり、将来に希望を見出せない等の閉塞感が漂う現代社会において、自分たちの社会は自分たちの手で創るという力を育む可能性を秘めているのです。

ダンスの語源には、‘Desire of Life’という意味があります。ダンスは人間が生きるということと密接に関係していると考えられます。ダンスがもつ力が社会を拓く可能性に大きな期待を寄せつつ、これからもダンスの教育的意義や教育方法を研究していきたいと思っています。

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