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歌は人なり、個性ある歌を目指そう


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私の専門は「声楽」です。クラシック音楽の分野で歌うことや指導を行っています。高校生までは歌うことに関心はありませんでした。ピアノを習い、音楽を聴くことは好きだったので音楽の教員を目指すことに決め、その受験のため必要に迫られて声楽を始めました。レッスンをお願いするため、音楽大学の先生に初めてお電話したとき、ある曲の最初の部分を歌ってくださいました。電話越しにも関わらず、甘くとろけるような美しい声が頭の中に響き渡り、まさにこの時が声楽に魅了された瞬間でした。

そのような美しい声は楽器と違って、いくらお金を積んでも買うことはできません。身体という楽器を一から作り上げていくことは困難な道のりですが、よい楽器への進化が実感できたときの喜びは計り知ることはできません。ただ、声楽は声がすべてではありません。「美声は七難隠す」と言われたことがあります。それは褒め言葉ではなく、それなりによい歌に聞こえているが、音楽的な問題が隠れているという意味です。逆に考えてみると、素晴らしい声がなくても、表現の仕方によって人を惹きつける歌を歌うことは可能であると言えるでしょう。楽譜や歌詞を見て感じ取るものは人それぞれであり、人生経験を積むことによっても質、量ともに高まります。それを他人に伝わるように表現するためには技術が必要ですが、試行錯誤し磨き続けることにより、歌にその人の個性が表れるようになります。「歌は人なり」という言葉は、けだし至言であると思います。

私自身は決して恵まれた声ではなく、ずいぶん苦労をしましたが、声や歌について個に応じた処方薬を多く持つことができ、それが指導において大いに役立っています。学生のみなさんの多くは4年間で楽器が磨かれ個性ある歌に変貌していきます。身体に浸透したものは長い年月を経ても、確実に美しい痕跡が残るはずです。それらを次の世代につなげていってほしいと期待しています。

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