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ブラジル文学を通じた私たちの気づき


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近年の地球温暖化による気候変動は、気候危機とも言われるように日々深刻になっています。私たちの日常生活でも、SDGsを意識した環境配慮型の商品や取組みを多く目にするようになってきました。
私の研究分野はブラジル文学ですが、ブラジルの環境問題に関して、2019年に起きたアマゾンでの大規模な森林火災が日本でも報道されました。アマゾンの熱帯林破壊は地球規模の気候変動に大きな影響を与えるとされています。アマゾンの森林には多種多様な生き物が生息していますが、その生態系は壊れやすく、地球の生物多様性が失われていく危機に直面しています。

 ここ数年、これら地球温暖化の問題を実感するときに読み返すのが、ブラジルの作家ジョゼ・J・ヴェイガ(José J. Veiga, 1915-1999)の作品です。工業化や都市化に伴う発展の弊害に危惧を抱き、幻想的な作品によって社会問題を風刺しました。短篇「迷惑な雄鶏」(1968年)は、ある小さな町が舞台です。そこに、遠方から連れてこられた沢山の労働者が森林を切り拓き、アスファルトを敷いた幹線道路を何年もかけて建設します。ようやく道路は完成するものの、町の住民は開通式に参加することを政府当局から禁じられます。しばらくすると、その道路を通行する車を巨大な雄鶏が襲い始めます。巨大な雄鶏は、都市化による自然破壊などに対する怒りと抗議を代弁しています。
この作品が書かれた時代にブラジルは高度経済成長を遂げる一方、社会格差が史上最も拡大した時期でもありました。
文学作品は、可視的には捉えにくく、気づきにくい人々の意見や心情を、その国の辿ってきた歴史事情を背景に、物語を通して表現し、示唆してくれます。
外国文学を読み、その国の社会について考えることは、自分自身や自分が所属する社会を違った視点で見つめなおす契機にもなります。また、現代社会は変化が急速で複雑です。そんな時、日常のルーティン化された生活の中で、時間を止めて物語を読むという特別な機会を作り出すことで、想像力が培われ、様々な課題にもチャレンジしようという積極的な姿勢や意識が湧いてくると思います。
ブラジル文学の読書体験が、新たな気づきになればと、授業で作品を紹介して意見交換をしています。


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