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韓国映画『パラサイト』が日本社会に投げかけたメッセージとは?


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昨今、韓国関連の話題といえば、何よりもポン・ジュノ監督の映画『パラサイト』が昨年5月のカンヌ映画祭でパルムドールを受賞、今年2月にはアカデミー賞を受賞したことです。全員失業中で半地下に暮らすキム一家。ある日、長男がIT起業のCEOである裕福なパク社長一家の家庭教師になったことをきっかけに、絵画教師として妹が、家政婦として母が、運転手として父がパク一家に足を踏み入れることになります。格差社会の象徴ともいえる2つの家族の出会いは、想像を絶する展開とともに悲劇的な結末を迎えるのです。
この映画を観て感じたことは、韓国映画は映画を観る楽しみも十分与えてくれる一方、格差社会の問題をストレートに強烈なメッセージとして伝えたことです。自国の社会問題を「映画」を通じて表現する力。すなわち、問題提起型の韓国社会に私は常に魅力を感じ研究してきました。民主化運動の成功という歴史の下、韓国では「おかしいと思うこと」をきちんと声に出して、社会を変えてきた歴史があります。私が研究テーマとする若者、ジェンダー問題も同様で、昨今の代表的な例としてはフェミニズム小説『82年生まれ、キム・ジヨン』の大ヒットがあげられます。
一方、この映画を紹介する日本の番組では、半地下暮らし、若者の就職難、財閥中心社会など韓国の超格差社会の現状にのみ焦点を当て、『パラサイト』が投げかけた格差社会の問題をまるで韓国だけの問題であるかのように報道しているのをよく目にします。韓国研究者としてこのような報道は残念に思います。実際、日本社会も格差が広がりつつある一方、男女格差は依然改善されない状況です。「OECD経済審査報告書(2017)」によると、日本の相対的貧困率はG7の中でアメリカについて2番目に高い数値となっています。また、世界経済フォーラムが2019年末に発表したジェンダー・ギャップ指数によると、153カ国中、韓国が108位であるのに対し、日本は過去最低の121位となりました。はたして、これらの事実をどれだけの日本人が知っているのでしょうか。
他の国を知るということは、単純な比較によって優劣を計るのでなく、その社会がどれだけ現状の社会問題を把握する力を持っているかであるといえます。韓国社会の中の普遍性を読み解くことこそが、韓国を等身大で理解することにつながり、日本社会への省察にもつながるのではないでしょうか。そのような姿勢で、日々研究に取り組んでいます。

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