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巻頭言


2024年度巻頭言 (第11回大会)
大会パンフレットより転載
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四言語で描く多彩な世界
常葉大学 外国語学部長
増井 実子


この度は多言語レシテーション大会にご出場いただき、誠にありがとうございます。本大会は、グローバルコミュニケーション学科で学べる韓国語、中国語、ポルトガル語、スペイン語という四つの言語の課題文(詩や文学作品)の暗唱を通じて、その言語の魅力を深く感じていただく機会になっています。今年も、大学生と高校生が一堂に会し、ソロ部門とペア部門で競い合います。それぞれの言語の響きやリズム、そしてその背後にある文化を感じ取っていただけることと思います。魅力的な課題文が揃っておりますので、皆さんの暗唱がこれらの作品に新たな命を吹き込むことを楽しみにしています。

私は、常々「美しい暗唱は美しい音楽のようだ」と感じています。たとえば私はスペイン語教員ですので、スペイン語部門の詩の内容は理解できますが、韓国語はわかりません。それでも、韓国語部門の出場者の声や演技力を通じて、その表現が上手いのかそれともそうではないのかをなぜか感じ取れてしまうのです。言葉の内容はわからなくても、感情や表現の深さが伝わってくる瞬間は、まさに言語の枠を超えたものだと思います。今日はぜひ、皆さん一人ひとりが表現者として、言葉を通じて自分の世界を存分に表現してください。

また、この大会に向けて懸命に練習を重ねてきた全ての出場者に、心からの敬意を表します。ソロ部門は自分の力で言葉の美しさを表現する孤高の場ですし、ペア部門は二人の相乗効果により詩の世界を広げる場となるでしょう。皆さんがこの場に立つために費やした時間と努力は、言語学習として成果を生むと信じています。

最後に、大会の成功にご尽力いただいた関係者の皆様にも、深く感謝申し上げます。本大会が、出場者一人ひとりにとって有意義な経験となり、さらなる学びと挑戦の原動力となることを心から願っております。

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言葉の力を感じるひとときに
常葉大学 外国語学部グローバルコミュニケーション学科長
谷 誠司


この大会は単なる詩歌の暗唱・朗誦にとどまらず、各言語が持つ歴史的背景や文化的な深みを参加者全員が共に感じ取り、体験する場であります。かつて本学の学長であった西頭德三先生の言葉*を借りると、朗唱は単なる言葉の再現を超え、その言葉が生まれた「時空」を追体験することに他なりません。西頭先生が北陸で体験された万葉朗唱の会は、まさにその「時空」を実感する貴重な機会であり、この大会もまた詩歌の持つ力を再確認し、言葉の奥深さを感じ取る場でありたいと考えております。

日本語とドイツ語で作品を手がける作家、多和田葉子氏は『エクソフォニー:母語の外に出る旅』**でこう書いています。「母語の外に出てみたのも、複数文化が重なりあった世界を求め続けるのも、その中で、個々の言語が解体し、意味から解放され、消滅するそのぎりぎり手前の状態に行きつきたいと望んでいるからなのかもしれない。」「外国語を学ぶということは、新しい自分を作ること、他の自分を発見することでもある。(中略)日本語でものを書いている限り、タブーに触れないようにする機能が自動的に働いてしまう。それが、他の言語を使っていると、タブー排斥機能が働かなくなって、普段は考えてもみなかったはずのことを大胆に表現してしまったり、忘れていた幼年時代の記憶が急に蘇ってきたりもする。」

母語の枠を超えて、多様な言葉が飛び交う場を共にすることで、言葉の力を再認識し、皆様にとって貴重なひとときとなることを心より願っております。どうぞ素晴らしい時間をお過ごしください。

*西頭德三(2016)『私の朗唱体験』 常葉大学多言語レシテーション2016年度(第3回大会)巻頭言
**多和田葉子(2012)『エクソフォニー : 母語の外へ出る旅』 岩波現代文庫

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