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線維筋痛症における慢性疼痛発症メカニズムの解明 ~固有感覚異常による疼痛誘導とミクログリアによる疼痛記憶~/健康柔道整復学科 安井正佐也准教授


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国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学大学院医学系研究科(研究科長・木村 宏)機能組織学分野の木山 博資(きやま ひろし)教授、桐生寿美子(きりゅう すみこ)准教授、研究員の若月康次(わかつき こうじ)と常葉大学健康プロデュース学部健康柔道整復学科の安井正佐也(やすい まさや)准教授の研究グループは、線維筋痛症で見られる異常な痛みの原因のひとつとして、通常意識にのぼらない固有(深部)感覚の持続的な過興奮が、脊髄内の反射弓に沿って、神経炎症に関わるミクログリアを活性化させ、これにより慢性疼痛が生じていることを、過活動神経回路を標識できるマウスモデル動物を用いた実験で明らかにしました。本研究は独立行政法人日本学術振興会の科学研究費補助金の支援を受けて行われ、研究成果は国際科学誌「Journal of Neuroinflammation」(米国時間 2024年1月 18日付の電子版)に掲載されました。

線維筋痛症と筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)は、痛みや疲労などの症状が共通した疾患です。以前の研究(Yasui et al, 2019)※1で、ME/CFSのモデルラットは、過剰な筋収縮が脊髄のミクログリアを活性化し、痛みを引き起こすことを示しました。さらにミクログリアの活性化を抑制する薬剤(ミノサイクリン)が痛みを抑制しました。さらに、過活動神経となった固有感覚の原因筋がヒラメ筋であったため、足関節を外科的固定して片脚のヒラメ筋活動を強制的に停止させました。
その結果、ME/CFSモデルラット固定側の足の痛みを抑制することができました。今回は、線維筋痛症モデルマウスという異ったストレスモデルでは、継続した筋緊張が固有感覚ニューロンの過活動を介してミクログリアを局所的に活性化し、ミクログリア活性化の持続が疼痛の慢性化につながっていることが明らかになりました。この研究結果により、全く異なる刺激を用いるモデル動物で類似の結果が見られたことから、線維筋痛症やME/CFSなどの類似疾患を取りまとめた機能性身体症候群に含まれる全般に共通の症状として見られる慢性疼痛は、同じようなメカニズムで生じていることを示唆していると考えられます。したがって、機能性身体症候群の患者さんに共通に見られる慢性疼痛を和らげる治療には、脳や脊髄に存在するミクログリアを標的とすることが有効である他、一部の筋の過緊張を解除し固有感覚ニューロンの過活動抑制を標的とする新たな治療法が考えられます。今後は、今回の結果のヒトでの実証と、新たな治療標的に対する効果的な治療法の開発が期待されます。
※1 引用文献
Yasui M, 他 、 Hyper-activation of proprioceptors inducesmicroglia-mediated long-lasting pain in a rat model of chronic fatiguesyndrome, J Neuroinflammation, 16(1):67 (2019), DOI: 10.1186/s12974-019-1456-x.
◆名古屋大学プレスリリース
https://www.nagoya-u.ac.jp/researchinfo/result/2024/01/post-618.html(別ウィンドウで開きます)
◆論文情報
雑誌名:Journal of Neuroinflammation

論文タイトル:Repeated cold stress, an animal model for fibromyalgia, elicits proprioceptor-induced chronic pain with microglial activation in mice

著者名・所属名:Koji Wakatsuki1, Sumiko Kiryu-Seo1*, Masaya Yasui1,2, Hiroki Yokota3, Haruku Kida1, Hiroyuki Konishi1, Hiroshi Kiyama1*

1 Department of Functional Anatomy and Neuroscience, Nagoya University Graduate School of Medicine, 65 Tsurumai-cho, Showa-ku, Nagoya, Aichi 466-8550, Japan

2 Department of Judo Seifuku and Health Sciences, Tokoha University, 1230 Miyakoda-cho, Kita-ku, Hamamatsu, Shizuoka 431-2102, Japan

3 Department of Mechanical Engineering, Meijo University, 1-501 Shiogamaguchi, Tenpaku-ku, Nagoya, Aichi 468-0073, Japan

DOI: 10.1186/s12974-024-03018-6(別ウィンドウで開きます)

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