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火星人


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私の専門は、がんの研究なのですが、特に微小管の研究をしてまいりました。微小管というのは細胞の中のものすごく微小な竹筒のようなものです。
今回はとっておきの画像をお見せいたします。
私は、細胞を顕微鏡で見ることが多いのですが、見ている最中は、実験目的に集中した観察をします。顕微鏡下に広がる世界は、目的以外にも、ある条件下に起きる全てを反映します。時に予想もしなかったものに遭遇し、目的を忘れ唖然とすることがあります。驚かされたのは写真、中央の細胞です。細胞体は微小管(微小管:緑に着色;核は青)が強く光っています。著しいのは、細長い突起を四方八方へ伸ばしていることです。

次に、実験の説明です。
線維芽(せんいが)細胞(実験でよく使われる細胞です)に、微小管のアセチル化を増やす薬をかけ培養しました。微小管は、模式図のように、α、βチュブリンタンパクが直列に重合したプロトフィラメント、それが13個、円をなすように並びます。管なので内腔(ないくう)があり、内腔側に苔(こけ)のようにつくのがアセチル基です。図中で「ア」です。
「火星人」というあだ名は、突起が写真枠に入りきらないほど長い細胞も出てくるのでつけました。ちょっと古いですが、HGウェルズの「宇宙戦争」に出てきた火星人みたいな感じです。薬をかける前と比べ、形が変化していない周りの細胞達は、この「火星人」から心なしか距離を置いているようです。変な奴にはお近づきになりたくない、ということなのでしょうか。ちょっとさびしい火星人…ですね。
なぜこんな変化が起きるのでしょう?
昔、麻酔科医の微小管研究者が、「微小管の管腔内には人の意識が存在している」と唱えたことがあります。医学的に、意識は神経細胞が司っている、という考えは、最近では常識化しています。では神経細胞の中のどこに意識があるのでしょう?もしかしたら、管の中の苔には意識に関係する何かがあるのかもしれません。このように目的から外れた画像が得られることもよくあります。

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