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高校の進路指導について研究しています


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高校生の皆さんは、将来の職業をどのようにお考えでしょうか。すでに明確な目標を持っている人もいれば、そうでない人もいると思います。
現在、小中高校で進められているキャリア教育は、「夢をつくり、それに向かって頑張る」という考え方が主流を占めています。しかし私は、これをすべての高校生に求めることに危うさを感じてしまいます。そう考える理由はいくつかあります。一つは、わが国には約1万7000種類の職業があるとされていますが(厚生労働省2011年)、社会経験の少ない高校生に将来の職業を急いで考えさせると、自分が消費者として接したことのある極めて少数の職業しか思い描けないという問題があり、さらに、そのように未熟な状態で早期に将来の職業を決めてしまうと、学校の勉強もその職業に就くために「必要か」「不要か」で判断してしまい、本来、高校生に求められる勉強をしなくなることが各方面から指摘されているからです。もう一つは、例えばオックスフォード大学の2014年の研究では、10~20年後にコンピュータ技術によって現在の職業の約半分が自動化され、消滅すると予測しています。もしこれが本当なら、現在の小学生が大学を卒業する頃にはその半分が消滅していることになります。このように考えると、先が不透明な時代に早期に将来の職業を考えさせ、それに向かって頑張らせるというキャリア教育のモデルには問題があるといえるからです。
しかし、この「夢をつくり、それに向かって頑張る」という考え方がピッタリ当てはまる職業もあります。それは、医師、薬剤師、看護師、建築士のような専門職です。このような職業を目指す場合、高校生の間に済ませておくべき勉強がある程度決まっていますから、できるだけ早い時期に志を立てる必要があります。これに対し、経営学部をはじめとする社会科学系や人文科学系学部に進学する人はどうでしょう。これらの学部の卒業生は、大部分が「普通の会社員」として社会に出ていくわけですが、高校生の段階で「普通の会社」で働く自分の姿をイメージするのは難しいですから、将来の職業を具体的に描きにくいのではないでしょうか。それでは、多くの人が非専門職に就くことになるこれらの学部に進む高校生はどうすればよいのでしょう。それはおそらく、大学入試に必要なかったり、一見その後の社会生活や職業生活に関係なさそうに思えたりしても、数学や英語などを投げ出さず、偏りのない勉強を最後まで続けることだと思います。なぜなら、真面目に「やるべきこと」に取り組むと「やれること」が増え、自分自身の可能性を広げることになると考えるからです。
急激に社会が変化している現在、必要なのは「夢」をつくりそれに向けて「人生の地図」を描くことではなく、精度の高い「人生を生き抜くコンパス」を身につけることではないでしょうか。高校生の皆さん、自分の足で道を切り拓いてください。


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