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形を描き出す行為


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タイトル:「Restoration」
素材:油彩、アクリル、キャンバス
サイズ:53×53㎝
制昨年:2021年

言語学者フェルナンド・ソシュールは、言語の役割は一つ一つの言葉の持つ意味そのものにあるのではなく、言葉と言葉の関係性の内に成り立つものだと説いています。そして彼は、さらに言葉の持つ意味作用は、他の意味と接した時のその隔たり(差異)において初めて呼び起こされるとさえ言っています。日常、私たちが使っている言語は、固定した意味として使っているわけではなく、その都度の意味の隔たりによって、新たな意味を生み出しながら語り合っています。これによって、なぜ言語が限られた数の言葉の組み合わせから無限に多様な意味を表現しうるのかも明らかになります。我々の思考活動は主に言語によって推し進められ、また逆に言語による表現は思考そのものとも言えます。同様に描画による意味作用は色彩や形象の関係性の内に成り立ち、その僅かな差異によって発生すると言えます。
形を描き出す行為は、見ることから始まる自発的な現実把握の営みです。すなわち新たな「見えるものとして」の現実を生み出す活動と考えられます。描き手(画家)は眼から手へと延長されるこの自発的な活動によって、固有の記憶を蓄積させていきます。

一般的に外界を見る人の意識の中に生成するものは、あくまでも内的世界つまり他者が関与することが出来ない主観的な出来事です。我々が外界をどのように見ているのかという、その意識の内側を測り知るすべを他者は持つことができません。しかし特定の個人が描き出した形象(絵画:見えるもの)を見るとき、自らが知覚したものを他者と感性的に共有することは可能ではないかと思うのです。なぜなら鑑賞者はその形象(絵画)から絶えず様々な無意識(感性)が誘いだされると同時に、自らもまた自発的に意識(感性)を再構成しようとするからです。このように描きだす行為は自己の中の他者性に出会う営みであるようにも思えます。

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