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「DNA超らせん構造」の研究を自由にやらせて頂いた恩師との出会い


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数学オタクの私の心を奪った生物の現象は、細胞の中に浮かぶ輪ゴムのような形をしているDNAのねじれによって生じるDNA超らせん構造でした。通常の2本鎖DNAでは、2本のDNAは反平行の向きに並び、約10.5塩基対あたり1回の割合で互いに右向きに巻きついています。従って、この閉環状2本鎖DNAにねじれを導入すると、輪ゴムの構造に加え、2本のDNAの巻き付き具合も微妙に変化し、DNA複製や遺伝子転写が制御されます。この微妙な構造変化を数学で解き明かそうと思い、分子生物学の世界に飛び込むことになりました。しかし、研究文献を読み漁ってみると、この構造変化は既に数学を用いて解き明かされていました。この時点で、私の興味はDNAにねじれを導入する酵素へと移っていきました。この酵素の精製とその機能解析を国立遺伝学研究所の広瀬進先生のもとで6年間行った後、ニューヨークのロックフェラー大学で、ヒトのゲノムDNAの超らせん構造による転写制御機構の解明研究を開始しました。Robert G. Roeder先生のグループは30名程のポスドクと4名の大学院生からなる研究者軍団であり、過酷な研究生活が有名となっている研究室のため、アメリカ人はわずか数名で残りは世界中から集まった猛者達でした。全てがノーベル賞級の新規発見を目指して、朝から夜中まで毎日のように切磋琢磨した3年間でありました。この間、Roeder先生からは世界一流の研究とは何かを一から教えて頂き、Roeder先生や多くの同僚と過ごした3年間は一生の宝物になっています。
現在は、DNAのねじれによる転写制御機構の解明研究から発見した成果をもとに、肺癌の新規治療薬の開発を目標に日夜研究を行っています。今思えば、私の興味に沿った研究テーマを与えて頂いた広瀬先生やRoeder先生との出会いが、その後の研究人生を決めることになったのだと思っています。

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