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SLA(第二言語習得研究)からISLA(指導による第二言語習得の研究と実践)へ


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私は第二言語習得研究と英語教育への応用を中心に研究生活を続けていますが、そのきっかけは、入門期の英語学習者はどのように英語力を発達させていくのかを体系的に学びたいと思って大学院(教育学研究科)に入ったこと、そして最初に出会ったSLA(第二言語習得研究)の本に衝撃を受けたことにあります。当時の応用言語学はすでにSLAが中心であり、学習者が発するエラーは第二言語が発達している証拠であるとの共通理解のもと、学習者言語の分析により文法形態素の習得順序が発見され、指導した順序に習得が進むわけではないとの発見に衝撃が走りました。
当時はSLAが充実しつつある時期で、豊富なインプット供給が必須であるとの主張は広く認められ、いっぽうでその反論としてのインタラクション仮説、アウトプット仮説も広く支持されていました。続いてSLA分野の研究は、母語の転移、語用の発達、普遍文法、インプットとインタラクションなど、様々なアプローチで探求が進み、瞬く間に発達、拡大しました。学習者のエラーは文法だけではなく、語用や修辞構造も分析の対象となり、日本の大学で英語を教える身としては、学生が間違いやすい項目に関する情報を集めるだけでも大変な時期でした。
さらにSLAは学習者の意識にも焦点を当てるようになり、気づき仮説が提唱され、心理、認知、意識に関する学際的な発展を遂げました。教室における言語習得研究も盛んになり、認知面の研究が発達し、SLAの成熟期と言える時期でした。近年では、学習者の社会的関わりに研究が拡大し、社会文化的アプローチが盛んになり、教室での英語によるやり取りが注目され、足場掛け(scaffolding) や協同的対話の効果が実証されるようになりました。言葉のやり取りが言語の発達に重要な役割を果たすことが明らかになったので、教室での英語指導や学習にも英語によるやり取りが重視されるようになりました。
国際化がさらに進み、英語は第二言語というより国際共通語という位置づけになった今、英語科教員には、学習者はどのようなプロセスを経て英語(外国語)を発達させるのか、そのためにはどのような指導がより効果的であるか、という視点からの知識と技術が必要とされています。学び続ける教員が求められる中、SLAを専門としているとこれからは特にISLA(指導による第二言語習得の研究と実践)が重要な研究分野であり、実践と強く結びついた学問領域であると感じる今日この頃です。

言語が発達するのを見るのも楽しいですが、学生が人間として発達し育っていくのを見るのはもっと楽しいので、コロナ禍でもめげずに努力を続ける学生たちに拍手を送り続けています。

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