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人生は未知の人間性を解き明かすための大きな冒険―生涯学習研究の醍醐味


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私の専門は「大人の学習」です。大人の学習では、参加体験型の学習が主流で、私もキャリアデザインやジェンダーに関するワークショップ学習を企画・実施してきました。その中での印象的なエピソードを紹介したいと思います。

男女共同参画センターの連続講座で「10年後の未来日記」というワークを行いました。これは、10年後の今日の自分の暮らしを具体的に想像して日記に書くというワークです。参加者の60代女性が、ハワイのホテルのテラスに一人座り、海に沈む夕日を見ながらシャンパンを飲むという日記を書きました。美しい夕日、波の音、大人の女性の落ち着いた時間がとても豊かで、他の参加者からはため息が出たほどでした。そんな時間を持てたらどんなに良いだろうと思ったからです。話し合いの時間に私は作者の女性に「ハワイにはよく行くのですか?」「お酒がお好きですか?」と質問しました。しかし女性の答えは「海外に行ったことはない」「お酒は一滴も飲めない」でした。率直に言って、私は彼女がこのような日記を書いた理由を理解できませんでした。
講座の最終日に、彼女から手紙をもらいました。手紙には「先生は私の未来日記を不審に思ったかもしれませんが」と前置きした後で、夫が亡くなり数年間は家にこもりがちだったこと、生活を変えようと講座に申し込んだが学習内容にもテーマにも関心がなかったこと、未来日記を書けと言われて困ったが書き出してみたらハワイで夕陽を見ながらシャンパンを飲む自分が浮かんだこと、皆が共感してくれて心が晴れたこと、そして最後に「これからの人生を楽しんでいいんだ、楽しめるんだということがわかった。参加して本当によかった」と書いてありました。

生涯学習の提唱者ポール・ラングランは、人間の一生は「未知の人間性を解き明かすための大きな冒険である」と述べています。その同伴者になれるのが、生涯学習研究の醍醐味だと思います。

ゼミ活動の様子

ゼミ生と意見交換


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