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Vol.37


サイエンス・コミュニケーションで子どもたちの学びを育む

中国の武漢でCOVID-19が猛威を奮っていた頃、日本はまさに対岸の火事状態で、やがて緊急事態宣言が発令される状況に追い込まれると予想していた人は少なかったのではないかと思います。徐々に、国内での感染者が増えゆく中、政府は2月に全国の学校に対し休校措置を要請しました。

当時、私は北海道大学CoSTEPに勤務する教員でした。CoSTEPは科学技術コミュニケーターを養成する機関で、科学を伝えるための教育と研究を行っています。一般的にはサイエンス・コミュニケーションと呼ばれる分野になります。

2月29日、研究機関や大学などの広報担当者で構成される、科学技術広報研究会(JACST)は自宅で学ぶ子どもたち向けに、「休校中の子供たちにぜひ見て欲しい科学技術の面白デジタルコンテンツ」(以下、面白デジタルコンテンツ)を公開しました。休校要請が出てからすぐの対応だったため、ウェブメディアを中心として大きな話題となったことは記憶に新しいところです。CoSTEPに対しても企画の初期段階で声がかかり、川本思心さん(北海道大学 大学院理学研究院 准教授/CoSTEP 部門長)が中心となって、これまでの活動の中で特に厳選してデジタルコンテンツを集めていくこととなりました。

私が直接関わったものとしては、2017年度に札幌市青少年科学館で実施した、サイエンスワークショップ「没入!バーチャル支笏湖ワールド」と同年度からスタートした「記憶の部屋プロジェクト」のVRコンテンツがあります。前者は北海道の身近な自然である、支笏湖の水中環境をダイバーになった感覚で学ぶことのできる内容です。後者は北海道大学の研究者の居室をデジタル空間にとどめて、論文上では表現されない研究者の思考や趣向を後世に残していくというコンセプトで制作しました。両コンテンツは面白デジタルコンテンツの「VR対応映像」カテゴリのページに、東京大学宇宙線研究所や海洋研究開発機構(JAMSTEC)や国立天文台のVRコンテンツとともに掲載され、子どもたちの自宅での学びに活かされることとなりました。そして、CoSTEPではこれらのコンテンツに加え、過去の活動の成果物である映像や読み物も暫時提供していきました。

没入!バーチャル支笏湖ワールドの活動報告
(画像クリックで詳細ご覧いただけます)

記憶の部屋プロジェクト公式サイト
(画像クリックで詳細ご覧いただけます)

▼その他の提供コンテンツ
【映像】
・有機合成が変えた世界 ~化学のフロンティアを切り拓く~ 鈴木章名誉教授 ノーベル化学賞受賞
https://www.youtube.com/watch?v=id0rmLr_49c

・イグ・ノーベル賞が北大にやってきた!【研究室訪問編】
https://www.youtube.com/watch?v=L-VhsNF6Qt8

・2019「北海道大学が紐解くテオ・ヤンセンの世界」記録映像_long ver.
https://www.youtube.com/watch?v=QkKTB_IsQD8

・第106回サイエンス・カフェ札幌 「ビバ!アラスカ地球紀行~文化人類学者が考える「人新世」とのつきあい方」
https://www.youtube.com/watch?v=qolsTwYIoNw

・第108回サイエンス・カフェ札幌「ムシの居所が問題だ。~エキノコックスとの付き合い方~」
https://www.youtube.com/watch?v=qxpIk3SBx58

・第109回サイエンス・カフェ札幌「カルボニルひもでつむぐ未来の化学〜見えない分子をソウゾウしよう」
https://www.youtube.com/watch?v=C0y1JGz6zPo

・裁判劇とワークショップ「私の仕事を決めるのは誰?〜裁判劇を通じて人工知能を用いた人事評価の是非を考える」
https://www.youtube.com/watch?v=_w6ZwTN4iqY

・潜入!人獣共通感染症リサーチセンター
https://www.youtube.com/watch?v=q52CiXC0k3w

・科学アート映像「Handmade Crystal Tree」
https://www.youtube.com/watch?v=K7ojI6OfpHc

・学校では教えてくれないザリガニモノガタリ
https://www.youtube.com/watch?v=Cb0DXDQGu5M

・まだまだ見えない
https://www.youtube.com/watch?v=sAiOTJoO4WE

【読み物】
・いいね!Hokudai【クローズアップ】
https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/like_hokudai/contents/index.php?storytopic=1



2020年6月現在。緊急事態宣言は解除され、全国の学校では子どもたちの通学が始まりました。休校中の自宅学習の中で、上記のコンテンツがわずかでも子どもたちの学びにつながり、今後の学校教育での気づきになるのであれば、制作にたずさわったCoSTEP関係者一同、ささやかな幸せとするものであります。

さて、4月に常葉大学に着任してからは、造形学部造形学科の学生と一緒にサイエンス・コミュニケーションの実践を進めるべく教育研究活動に励んでいます。静岡の地域に根差したサイエンス・コミュニケーションの活動報告をまたどこかの機会でできる日が待ち遠しい限りです。


執筆者 村井貴
造形学部 造形学科 講師
(専門は情報デザイン)

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