グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



Vol. 13


新型コロナウイルス時代の心構え

 新型コロナウイルス感染症以前のことですが,病院に行くとドアの前にマスクの箱や消毒液が置かれるようになってから随分たつように思われます.もちろんこれは院内感染の防止対策ですが,薬剤耐性菌に対する対策でもあったのです.つまり,薬剤耐性菌が病院内で拡大することを防止するための対策です.
 当初,私はマスクの箱や消毒液の設置に懐疑的でした.しかし,私は毎年日本整形外科学会や日本リハビリテーション医学会の年次学術総会で感染症対策のための教育研修講演を受講してわかったことですが,当時,薬剤耐性菌(細菌)に関しては先進国中最悪の状態だった日本が現在では最も優良な国になっているのだそうです.つまり,病院におけるマスクの箱や消毒液の設置には薬剤耐性菌の拡大にとても大きな効果があったと思われるのです.
 新型コロナウイルスは細菌ではなく,ウイルスですが,薬剤耐性菌と同様厄介な存在です.しかも,ワクチンはなく,治療法がほとんどないという状況であれば,一層,院内感染症や薬剤耐性菌の対策と同様,マスクの着用や手指の清潔さを保つという初歩的な対策を徹底して行うことは重要だと思われますし,少なくとも今はこれしかできないのです.
 クゥワランタインという言葉を耳にすることがあるかもしれません.これは隔離のことで,英語でquarantineというのですが,もともとラテン語で14という数字です.中世に感染症が拡大しないように感染者を14日間隔離することから14が隔離という意味になったと言われています.そして,この14日間は新型コロナウイルスの感染者に対しても隔離期間となっていますが,これは潜伏期間が2週間ほどだからです.つまり中世の対策です.
 しかも外界と自分とを隔てるものはマスク一枚.しかし,今私たちに問われているのは心構えであるように思えて仕方がありません.そして,それは常に新型コロナウイルス感染の危険に立たされている最前線にたつ医療従事者ばかりではなく,政策を立案する官僚達,法律を策定する国会議員達,最終決定をする総理大臣,そしてわれわれ一般市民すべてにおいてです.
 その心構えは皆さん一人一人が考えることですが,ガンジーの言葉を添えておきます.「永遠に生きるが如く学べ,そして明日死ぬがごとく生きよ.」そして私はこうつけくわえるのです,不要な外出を我慢し,遠隔授業に参加し,マスクをし,手指の清潔をたもち,そして医療従事者に敬意を払ってくださいね,と.
 新型コロナウイルスはRNA一本で構成されています.変異もしやすいといわれています.変異をする際,より有毒になるチャンスは少なく,むしろ無毒化に向かう可能性が高いのです.われわれは自分たちのできることを考えベストを尽くしましょう.自粛警察になってお互いを傷つけあうなんて無意味です.学生のみなさんも辛抱強く耐えてください.

図.私の新型コロナウイルス “食っちゃえ” ハムエッグ

執筆者 鈴木伸治
保健医療学部理学療法学科 教授
(専門は整形外科学)

ページの先頭へ戻る