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Vol.17


自分らしく、今できること

大学生活における心理的課題

Covid-19によりこれまで体験したことのない生活環境の変化が起き、通常とは異なる大学生活が始まっています。この時期をどのように過ごしていくか、大学生活の心理的課題を踏まえて考えてみましょう。
大学生活では学年の進行に伴い心理的課題が変化します。この観点から大学入学期である1年生では高校生活との別れと大学への心理的移行が行われるといわれ、入学前から持ち越してきた課題とともに、今までの生活から分離し、新しい大学生活への移行が進みます。2年生では学業と対人関係が主な課題になり、学習姿勢や友人関係の捉え直しと再構築が行われます。3年生は卒業研究を行うゼミなど少人数で心理的に接近するチームでの活動が本格的になり、卒業研究のテーマを考え、就職活動を意識することで自らの将来を身近なものとして考え始めます。卒業期の4年生は大学生活の終点を意識して、卒業後の進路を決定していきます。これらを概括すると大学生活は、学生自身が「将来どのように生きていくかを考え、自分で決めていく」という心理的課題とともに進むといえます。


パンデミック下で起こりやすい心の状態

パンデミック(感染症の世界的大流行)下の行動制限を受け、前述の学年特有の心理的課題への新たな試みがスタートしづらい感覚を持つことがあるかもしれません。4年生は就職活動、教育実習などの予定がずれて先の見えない不安にかられ、焦燥感が高まることも懸念されます。学年に限らず、スポーツを続け、新年度のさらなる記録更新を目指してきた学生には、技術や体力、モチベーションの持続に力を注ぎつつも、試合や記録会が開催されるかどうか気になるところでしょう。このような大学生活の問題は全国の大学生に共通でみられる現象であり、明確な見通しが立たない不透明な状況では不安に苛まれやすいのですが、いずれ落ち着いていくことでもあります。
パンデミック状況で起こりやすい一般的な心理と行動を対人交流、インターネット利用、心身の課題からみてみます。感染予防のために、人との交流に物理的距離を確保することについては今さら言うまでもありませんが、心理的距離を遠ざける必要はありません。Covid-19に関係なく、以前と同様に心の繋がりを保てているでしょうか。オンライン授業やリモートワークの促進は私たちの生活の質を守り、高めていきますが、一方で、過度のネット依存など不適切なネット利用はこれまで以上に問題となっています。行動制限の長期化により、精神状態は通常より不安定になりやすく、怒りを感じやすくなる傾向も指摘されていますが、心に余裕が持てなくなると、自己中心的になり、他者への配慮ができなくなります。コミュニケーションをとることに苦手意識がある場合にはひきこもり傾向が、また、不登校の経験を有する場合には状況の変化に伴い、大学への心理的負担が増大する恐れもあります。
各個人のパーソナリティの特徴や現在の環境により上記のような反応の表れ方は異なりますが、これらは自然な反応であり、誰にでも起こり得ることです。心よりも身体に反応が起こりやすい場合もあります。大切なことは、このような反応や行動を理解し、そのうえで現在の自分の状況を客観的に観察し、自分の感情を抱えるように努めることです。


感情と言動を客観的に見る

心の健康を保ち学び続けるためには、人と心理的、日常的な繋がりを持ち関わり続ける意識を持つこと、自分自身の生活や言動を客観的に見る姿勢を保つことが求められます。Covid-19の影響を受け、SNSの利用は一層、盛んになっていますが、ツールを利用している時間は日常の生活時間に合っているかどうか、誤った情報に自分自身をコントロールされていないか、他者をコントロールしていないかを客観的に観察してみましょう。各個人の生活時間の使い方はそれぞれ異なります。「言葉」の使い方はどうでしょうか。私たちは人と直接会って会話を行うときに、発する言葉そのもの以上に、その他の情報、例えば視線や表情、仕草や言葉のトーンなどから相手の感情を読み取っています。逆に言えば、SNSなどの利用でのコミュニケーションが拡大して物理的距離をとるという、直接的な関わりを減らす状況においては、言葉そのものの受け取り手に与える影響が大きくなります。人と繋がっていくために他者に与える言葉の重みに一層、留意する必要があります。


少し先の自分をイメージする

大学期はアイデンティティの確立という大切な課題を持つ時期といわれます。その課題を探求していくプロセスにおいて、現状ではパンデミックにおける生活環境の制限を受け、残念ながら今はまだやりたくても自分の力ではどうにもできないことがあります。例えば、頑張り続けてきたスポーツでの全国大会への挑戦や海外留学への道を閉ざされたように感じている学生もいるかもしれません。そのような心情に触れると胸が痛みます。しかし、今できないことにとらわれ過ぎると心理的にとても消耗します。いずれ日常は戻ってきます。少し先の、「将来こうありたい自分の姿を具体的にイメージする」ように努め、「自分らしく、今できること」に目を向け、今できることに主体性を持って取り組みましょう。パンデミックはいずれ落ち着きます。あなたの夢は続きます。
執筆者 松瀬留美子
健康プロデュース学部 心身マネジメント学科 教授
(専門は青年期の心理・学校臨床)

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