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津波ビル 事前に指定すれば避難時間が半分に短縮/池田浩敬教授

本学社会環境学部長の池田浩敬教授が、津波の際の住民避難のシミュレーション結果より、避難者の適切な振り分けの必要性を解説しています。
以下、中日新聞掲載記事です。

避難先を指定した場合のシミュレーションの一部。ピンク色は津波避難ビル、茶色と緑色は避難する住民。避難ビルの指定で、迂回せずに最短で避難先に到達できる=池田教授提供

どこの津波避難ビルに逃げるかをあらかじめ指定しておくと、避難時間は半分以下になるー。常葉大社会環境学部(富士市)の池田浩敬教授(都市防災)がまとめた住民避難のシミュレーションで、こんな結果が確認された。避難先は市町や自治会が地域ごとに決めているところが多い。池田教授は「ビルの容量に応じて避難者を適切に振り分け、時間の短縮に努めてほしい」と訴えている。
シミュレーションしたのは、南海トラフ巨大地震による津波で大きな被害が心配されている沼津市の第二地区。夜間人口を住宅のみの約九千人として試算した。南海トラフ地震の想定では、沼津市は5分ほどで津波が到達するとされている。
社会現象の分析や予測に使われる「マルチエージェントモデル」と呼ばれる手法を用いた。群集を一定のルールで動かしながら「避難する人が殺到して混雑すれば、歩行速度は低下する」「避難先が容量を超えた場合、迂回(うかい)して別の避難先に向かう」といった条件を織り込んで試算した。
シミュレーションの結果、避難先を指定しないと、ビルの収容人数がいっぱいになった際、必ずしも最寄りのビルに避難するのではなく、別のビルに回る住民が多数出た。一部のビルでは収容人数20人に対し、10倍の200人が詰め掛けるなどして混乱も発生。避難完了までに結局、22分30秒かかった。
一方、避難先をあらかじめ振り分けた場合、一部のビルに殺到することなく、スムーズに避難できた。完了までの時間は12分8秒短縮して10分22秒だった。
実際には、避難を開始するまでの時間や、ビルの階段を上がる時間が加わる。池田教授は「避難先を指定し、その上で避難訓練で検証していくことが重要」と指摘する。
県のまとめでは、東日本大震災の前後で比べると、県内の津波避難ビルの指定が進み、3月末現在で782棟増えて計1290棟となった。
岩田孝仁県危機管理監代理は「東日本大震災前は避難先が明確になっていなかったが、震災によって避難ビルが増えて、避難先の指定も進んでいる。きちんと適切に人を配置して避難できるよう各地域で検討してほしい」と呼び掛けている。
(2013年4月7日 中日新聞掲載)